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クラスカルウォリス検定とは? 実際にRでやってみよう

2023年11月28日

統計学の中でも特に興味深いツールであるクラスカル・ウォリス検定について、より深く掘り下げてみましょう。この検定は、特にサンプルサイズが小さい場合や、データが正規分布に従わない場合に重宝されます。

クラスカル・ウォリス検定とは何か?

クラスカル・ウォリス検定(Kruskal-Wallis test)は、簡単に言うと、3つ以上のグループのデータが同じ特性を持っているかどうか(言い換えると、サンプル群の中央値に差があるかどうか)を調べるための統計的手法です。これは、通常の分散分析(ANOVA)の代わりに使われることが多く、特にデータが特定のパターン(正規分布)に従わない時や、データの量が少ない時に役立ちます。

クラスカル・ウォリスの手順

手順① 順位付け

この検定では、全てのデータポイントを一つにまとめて、最小値から順に順位付けします。この順位付けにおいて、同じ値を持つデータ点がある場合は、それらに平均順位を割り当てます。順位付けは、個々のデータ値の代わりに、その相対的な位置を用いるため、異なるグループ間でのデータの分布の違いをより適切に捉えることができます。

手順② 検定統計量 の計算

ここでの重要なステップは、各グループのランク和を用いて検定統計量Hを計算することです。この
H 統計量は、グループ間でデータの分布がどの程度異なるかを示す指標となります。この計算により、グループ間でのデータのバリエーションを数値化することができます。
H統計量は次の式になります。

ここで、
Rjj群の順位の和
njj群のデータ数
n:すべてのデータ数
Hは自由度 fk-1のカイ二乗分布に従います。

手順③ p値の計算と結論の導出

次に、計算された 統計量に基づいて、p値を決定します。このp値は、観測されたデータがグループ間で有意な差がないという帰無仮説の下で生じる確率を示します。p値が事前に設定された有意水準(通常は0.05)よりも小さい場合、我々は帰無仮説を棄却し、グループ間に統計的に有意な差が存在すると結論付けます。

まとめ

クラスカル・ウォリス検定は、データの分布が正規でない場合やサンプルサイズが小さい場合に特に有用です。しかし、この検定はどのグループが異なるのかを特定することはできません。したがって、有意な結果が出た場合は、どのグループが異なるかを明らかにするための追加のポストホック検定が必要となります。この検定をマスターすることで、より深いデータ分析が可能になり、統計学の理解が一層深まります。

例題を解いてみましょう

例題:ダイエットプログラムの効果比較

3つの異なるダイエット方法A、B、Cの効果を比較する研究を考えます。

ある研究で、3種類のダイエットプログラム(A、B、C)の効果を比較しています。
各プログラムは異なるグループの参加者に適用され、6週間後の体重減少量(kg)が記録されました。

参加者とデータ

  • プログラムA: 5人の参加者
    体重減少量: 2.0, 2.1, 1.9, 2.2, 2.3 kg

  • プログラムB: 5人の参加者
    体重減少量: 3.1, 3.6, 3.4, 3.0, 3.2 kg

  • プログラムC: 5人の参加者
    体重減少量: 1.5, 1.4, 1.6, 1.8, 1.7 kg

クラスカル・ウォリス検定の実施

手順① 順位付け

効果の低い最小のものから順に順位付けしていきます。
順位付けすると、次の表のようになります。

1人目2人目3人目4人目5人目
プログラムA786910
プログラムB1215141113
プログラムC21354

手順② 検定統計量Hの計算

RA=7+8+6+9+10=40
RB=12+15+14+11+13=65
RC=2+1+3+5+4=15
よって、Hは次のようになります


手順③ 結論の導出(p値はRを使って後ほど計算します)

p値を出すにはRを使ってあとで算出します。
ここでは表を使った方法で解いていきます。
α=0.05で3群がそれぞれ5の時の棄却限界値は次の表より、5.78になります

H=12.5>5.78なので、帰無仮説(3つの群の母代表値に差は無い)を棄却します。

したがって、結論は3つのダイエットプログラム(A、B、C)間で体重減少量には統計的に有意な違いがあると結論づけることができます。


Rを使ってクラスカルウォリス検定をやろう!

先ほどの例題をRを使って検定してみましょう。
スクリプトは次のとおりです。

# データの準備
data_A <- c(2.0, 2.1, 1.9, 2.2, 2.3)
data_B <- c(3.1, 3.6, 3.4, 3.0, 3.2)
data_C <- c(1.5, 1.4, 1.6, 1.8, 1.7)

# 全データを統合し、グループのラベルを付ける
data <- c(data_A, data_B, data_C)
group <- factor(c(rep("A", length(data_A)), rep("B", length(data_B)), rep("C", length(data_C))))

# クラスカル・ウォリス検定の実行
kruskal.test(data ~ group)

# 結果は自動的に表示されます

Rスクリプトを実行すると次のような結果になります。

H=12.5、p値=0.00193<0.05という結果になりましたので、有意差ありという結果です。
先ほどの手計算の結果と同じですね。

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